デカニジは三味線を弾く? [ニジマス]
【2007年7月某日】
週末ごとに良型のニジマスと遊べた6月が過ぎ、水位が下がり水もぬるんだ7月。
大河T川の支流であるN川に出掛けました。
朝マズメに深場を狙ったものの結果が出ず、陽射しがジリジリと熱を持ちだした7時頃、
私は川に立ち込んだままポイント移動を考えていました。
>N川は中規模の渓流で、警報レベルの大雨が降らない限り水質はいつもクリアです。
上流にダムは無く、生息するニジマスやヤマメやアメマスの餌となる水生昆虫も豊富で
私のお気に入りの川です。シーズン中は何度も足を運んでいました。
車に戻り移動した先は瀬でした。
100mほど藪コキして川原に降り立ち、身体に付いた朝露とクモの巣を拭いとりながら
深呼吸して初夏の清々しい空気を吸い込みました。
その瀬は川幅が20mくらいで、瀬の中にはヤマメが陣取っていて、
その少し下流では小型のニジマス、浅瀬は新仔のヤマメがいて…
でもこの日に狙っていたのは、6月に手が届かなかった60cmを超えるニジマスです。
長くはない瀬はやがて幅を狭め、対岸にぶつかって生い茂る草を浸食しています。
そこには倒れかかっている川ヤナギの木があり、枝が水面を覆っているまさにその場所。
デカニジの雰囲気はムンムンしてはいますが、時期と時間を考えると…んーどうでしょう。
しかしそれは1投目でした。
バルサ製50mmのシンキングミノーをヤナギの上流3mのところにキャストします。
ヤナギは枝が柔らかく水流に負けてしなるので根がかりを気にせず
遠慮なくミノーをドリフトさせながら沈めていきました。
スロー気味に、チョン・チョン・スー・チョン・チョン・スーと2回繰り返し誘います。
直後、
トンッ
川底の石にでも挟まったようなアタリ?
とりあえず手首を返す程度にアワセをいれてやりました。
するとスーッと下流に移動するライン。重さはそれほど感じません。
「なんだヒットしたのか…30cmくらいかな?」
そして下流の対岸に向かって走り出します。少し加速しながら…
私も追いながら下流に移動。
「いやいや、40はあるな」
対岸のボサ下に達し一時停止。すぐにひるがえし今度は岸に沿って上流にゆっくりと動きます。
やがて元々隠れていたであろうヤナギ付近まで近付いてしまいました。
主導権は相手側にあります。
>ロッドは長めの7.7ft。50cm前後のニジマスには力負けすることもありましたが、
使っていて楽しい柔らかめのロッドです。
ヤナギと密集した草の下に潜り込まれたらやっかいです。
ロッドを真横に寝かせてアオリ、引きはがしにかかります。
スプールを押さえ、グーーーッと力を加えていきました。
6lbのラインが糸鳴りを始めます。すると…
フワッ
いきなりテンションが抜けてしまいました。
張っていたラインが力無く水に落ちます。
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「ありゃりゃ、バレたか?」
それもつかの間、水面に落ちたラインが弧を描き始めました。
「まだいた!」
ヤナギの手前でまた下流に走り出していたのでした。
ラインを巻きながら相手との距離を詰めるため、私は川原から水中に立ち込みます。
そいつは私の10m先、水深1mの川底付近にいます。まだ目視はできません。
「賢いな、50upか、よし!」
さらに一歩踏み出しました。
私の存在に気付いたのか、直後からのファイトは私の冷静さを吹き飛ばすものでした。
ジャンプ、ジャンプ、突っ走り、首振りのオンパレード。
ドラグは金属音のように鳴り響き、浅瀬を右へ左へ走らされた私は頭からビチョビチョになっていきます。
……。
何分経ったかは分かりません。時間感覚なんてアドレナリンが溶かしてしまいました。
ヒットした場所から50m下流で、私とそいつは3mの距離にいます。
「でけー!ふとー!」
背中のネットを左手に、右手はロッドを高く掲げ寄せにかかります。
ネットインはあっけなく成功。
でもその瞬間に口からピョコンとミノーが外れました。
細軸のシングルフック。2本とも90度近く伸びています。ギリギリでした。
ワニ顔のニジマス♂で62cmでした。
その後このニジマスは、速やかに水の中で回復させてからリリースしました。
これが私が初めて60cmを超える野生のニジマスを釣る事が出来た日のことでした。
それまでのニジマスとは全く異色なファイトがとても印象的で、
狡猾で獰猛な文句なしのファイターでした。
《おわり》
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週末ごとに良型のニジマスと遊べた6月が過ぎ、水位が下がり水もぬるんだ7月。
大河T川の支流であるN川に出掛けました。
朝マズメに深場を狙ったものの結果が出ず、陽射しがジリジリと熱を持ちだした7時頃、
私は川に立ち込んだままポイント移動を考えていました。
>N川は中規模の渓流で、警報レベルの大雨が降らない限り水質はいつもクリアです。
上流にダムは無く、生息するニジマスやヤマメやアメマスの餌となる水生昆虫も豊富で
私のお気に入りの川です。シーズン中は何度も足を運んでいました。
車に戻り移動した先は瀬でした。
100mほど藪コキして川原に降り立ち、身体に付いた朝露とクモの巣を拭いとりながら
深呼吸して初夏の清々しい空気を吸い込みました。
その瀬は川幅が20mくらいで、瀬の中にはヤマメが陣取っていて、
その少し下流では小型のニジマス、浅瀬は新仔のヤマメがいて…
でもこの日に狙っていたのは、6月に手が届かなかった60cmを超えるニジマスです。
長くはない瀬はやがて幅を狭め、対岸にぶつかって生い茂る草を浸食しています。
そこには倒れかかっている川ヤナギの木があり、枝が水面を覆っているまさにその場所。
デカニジの雰囲気はムンムンしてはいますが、時期と時間を考えると…んーどうでしょう。
しかしそれは1投目でした。
バルサ製50mmのシンキングミノーをヤナギの上流3mのところにキャストします。
ヤナギは枝が柔らかく水流に負けてしなるので根がかりを気にせず
遠慮なくミノーをドリフトさせながら沈めていきました。
スロー気味に、チョン・チョン・スー・チョン・チョン・スーと2回繰り返し誘います。
直後、
トンッ
川底の石にでも挟まったようなアタリ?
とりあえず手首を返す程度にアワセをいれてやりました。
するとスーッと下流に移動するライン。重さはそれほど感じません。
「なんだヒットしたのか…30cmくらいかな?」
そして下流の対岸に向かって走り出します。少し加速しながら…
私も追いながら下流に移動。
「いやいや、40はあるな」
対岸のボサ下に達し一時停止。すぐにひるがえし今度は岸に沿って上流にゆっくりと動きます。
やがて元々隠れていたであろうヤナギ付近まで近付いてしまいました。
主導権は相手側にあります。
>ロッドは長めの7.7ft。50cm前後のニジマスには力負けすることもありましたが、
使っていて楽しい柔らかめのロッドです。
ヤナギと密集した草の下に潜り込まれたらやっかいです。
ロッドを真横に寝かせてアオリ、引きはがしにかかります。
スプールを押さえ、グーーーッと力を加えていきました。
6lbのラインが糸鳴りを始めます。すると…
フワッ
いきなりテンションが抜けてしまいました。
張っていたラインが力無く水に落ちます。
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「ありゃりゃ、バレたか?」
それもつかの間、水面に落ちたラインが弧を描き始めました。
「まだいた!」
ヤナギの手前でまた下流に走り出していたのでした。
ラインを巻きながら相手との距離を詰めるため、私は川原から水中に立ち込みます。
そいつは私の10m先、水深1mの川底付近にいます。まだ目視はできません。
「賢いな、50upか、よし!」
さらに一歩踏み出しました。
私の存在に気付いたのか、直後からのファイトは私の冷静さを吹き飛ばすものでした。
ジャンプ、ジャンプ、突っ走り、首振りのオンパレード。
ドラグは金属音のように鳴り響き、浅瀬を右へ左へ走らされた私は頭からビチョビチョになっていきます。
……。
何分経ったかは分かりません。時間感覚なんてアドレナリンが溶かしてしまいました。
ヒットした場所から50m下流で、私とそいつは3mの距離にいます。
「でけー!ふとー!」
背中のネットを左手に、右手はロッドを高く掲げ寄せにかかります。
ネットインはあっけなく成功。
でもその瞬間に口からピョコンとミノーが外れました。
細軸のシングルフック。2本とも90度近く伸びています。ギリギリでした。
ワニ顔のニジマス♂で62cmでした。
その後このニジマスは、速やかに水の中で回復させてからリリースしました。
これが私が初めて60cmを超える野生のニジマスを釣る事が出来た日のことでした。
それまでのニジマスとは全く異色なファイトがとても印象的で、
狡猾で獰猛な文句なしのファイターでした。
《おわり》
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